上品な出会い

「ワガママ!」と言われてもしかたがない。

お義父様は、ただただじっと、私とお義母様のやりとりを聞いていた。 私とお義父様の間には方言という言葉の壁があり、どうせ通じないと思っていたからかもしれない。
黙って耐えるその姿は、彼の息子によく似ていた。 無理やり子供がほしくないことを理由にして、こんなカタチでお別れするのがつらかったが、これから縁を切ろうという、義理の親子なのだ。
「出会えて楽しかったです」と、握手して別れるわけにはいかない。 私は最初から最後まで、顔をこわばらせていた。
話し合いを終え、私と彼はその日のうちに、とんぼ返りすることになった。 彼の祖母がニコニコ笑い、「あれえ、もう帰るの。 またおいでね」と言った。
彼女は何も聞かされていないらしい。
彼女は私たちの乗った車が走り去るのを、いつまでもヒラヒラと手をふり、見送っていた。 「そうすりゃ、ウチの両親、帰って来いって言うんじゃん?」「なんで?」「イヤだ」「ケンカして私が飛び出したことにして、アンタがウチの実家に電話する、これでどうだろ」バツイチは勇気のあかし。
両親に縁を切られ、義父母に悲しまれ、ようやく離婚やむなしの空気が整った。 身勝手な離婚を押し通そうとする一方で、私は周囲にじゅうぶん、あきらめてもらったうえで離婚したい、と考えていたのだ。
それには、私の両親に軟化してもらわなくては。 勝手にせい、と言われても、実家の敷居をまたげないのでは、意味がない。

私は、膨大な荷物を抱えて困ってんだから。
「とりあえず、私、友達んちにでも泊めてもらおうかなあ」私は夫に言ってみた。

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